はじめに
日本の住宅市場は新築中心からストック活用型へとシフトしています。国土交通省の統計によれば、日本の住宅ストックは約6,200万戸に達し、そのうち築30年以上が約2,000万戸を占めています。人口減少により新築着工戸数は減少傾向にある一方で、既存住宅の改修・リフォームは需要が拡大しています。
今回、HOUSEMEDIA編集部が取材した展示会でも、この市場変化を踏まえたリフォーム提案の強化が至るところで見られました。そのなかでも特に関心を集めていたのが補助金制度です。
来場した法人担当者からは「補助金の説明ができるかどうかで成約率が大きく変わる」という声が多く、制度理解が営業活動に直結している様子が印象的でした。
リフォーム市場の成長要因

1.住宅ストックの高経年化
都市部を中心に築40年以上のマンションや戸建てが急増しています。国交省の資料によると、築40年以上のマンションは2022年末時点で約125.7万戸でした。今後10年後には約2.1倍、20年後には約3.5倍に増加する見込みです。断熱改修や配管更新、耐震補強といった大規模リフォームの必要性が急速に高まっていることが見て取れます。
2.省エネ・カーボンニュートラル政策
政府は2030年に温室効果ガスを46%削減する目標を掲げ、省エネ住宅の普及を強化しています。住宅の断熱性能向上は特に重要視されており、省エネリフォームは政策的な強い追い風となっています。
3.ライフスタイルの多様化
テレワークの普及により、間取り変更・ワークスペース設置などのニーズが増加。また二世帯同居や高齢化に伴うバリアフリー改修も顕著です。
4.エネルギー価格の高騰
電気・ガス代の上昇を受け、「顧客が光熱費削減効果を求めているため、提案材料として省エネ商材を強化したい」という法人担当者の声が多く聞かれました。
補助金制度が果たす役割
リフォーム市場の成長要因と補助金制度まとめ
表1:リフォーム市場の成長要因(市場背景)
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出典:国土交通省、環境省、経済産業省、住宅金融支援機構(2025年公表資料)※2025年10月時点での情報です。申請前に各制度の募集要項で詳細をご確認ください。
表2:主要な補助金制度一覧表

出典:国土交通省、環境省、経済産業省、住宅金融支援機構(2025年公表資料)※2025年10月時点での情報です。申請前に各制度の募集要項で詳細をご確認ください。
特に「補助金対象製品」を明確に打ち出している企業は来訪者数が大幅に増加しており、名刺交換数が前年比130%となったメーカーもあります。
補助金制度の理解度は、来場者とのコミュニケーションの深さに直結していると言えます。
営業現場での活用事例

●工務店
断熱窓リフォームを提案する際に、「補助金で初期費用が軽減できる」ことを提示することで、顧客の意思決定を後押し。複数案件で即決につながったとの報告があります。
● 不動産会社
モデルルームに「補助金活用後の実質価格」を掲示したことで、若年層や子育て世帯の購入判断が早まり、成約スピードの向上につながりました。
● メーカー
「補助金対象製品リスト」を提示する企業が増加。これにより説明がスムーズになり、見込み客との接触数が増加しました。
● 管理会社
管理組合向けに共用部改修×補助金の成功事例を紹介し、役員クラスからの具体的な相談が増えたとの声がありました。
消費者心理と補助金の効果

展示会でのヒアリングでは、事業者から次のような声が挙がりました。
【補助金がある場合】
→ 「制度が終わる前に提案したい」「顧客の意思決定を促しやすい」
【補助金がない場合】
→ 「提案に時間がかかる」「コスト理由で進みにくい」
つまり補助金は、金額以上に“意思決定を前に進める力”を持つ営業ツールとして機能していることが明確になりました。
よくある失敗と注意点
展示会で共有された注意点として、以下の課題が挙がっています。
・書類不備による差し戻し
・対象外工事の誤申請
・写真データ不備による不受理
・予算消化の見誤り
なかには、「契約書に対象工事が明記されておらず不交付となった」ケースもあり、
営業・施工・事務の情報共有の重要性が指摘されていました。
図1:リフォーム市場規模の推移(2020〜2025年度予測)

出典:経済産業省『住宅リフォーム・リニューアル調査』
将来展望
リフォーム市場は2030年に10兆円規模へ拡大すると予測されています。注目される成長分野は以下の3つです。
1.省エネ改修
2.耐震改修
3.バリアフリー改修
いずれも补助金制度が強力に後押ししており、最新情報を把握し提案に落とし込める事業者が選ばれる時代になっています。
まとめ
今回の展示会取材では、補助金制度が営業現場における“最大の関心テーマ”であることが明確になりました。制度理解が深い企業ほど来場者からの信頼を得やすく、商談化率も高い傾向にありました。
HOUSEMEDIA編集部では今後も補助金制度の最新情報や活用事例を継続的に発信し、事業者の提案力を支援していきます。








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