はじめに
日本の分譲マンションストックは年々増加し、2024年末時点で約713.1万戸に達しています。そのうち築40年以上のマンションは約148万戸と全体の約21%を占めており、修繕や管理のあり方が社会的な課題としてクローズアップされています。
一方、エネルギー価格の高騰や脱炭素社会の実現に向けた政策が進む中、単なる修繕にとどまらず、省エネ改修を含めた新しいマンション管理の在り方が求められるようになってきました。管理会社や施工会社にとっては新たな提案の切り口となり、住民や管理組合にとっては生活の質と資産価値を守る手段となります。
本稿では、市場の背景や制度の仕組み、展示会での事例、失敗時の注意点、そして将来展望を整理しながら、出展企業の営業や販促に役立つ視点を提示します。
背景や市場動向
図1:築30年以上マンション比率の推移(参考)

出典:国土交通省『マンション政策情報』等
マンション管理はこれまで、定期的な大規模修繕を中心に進められてきました。しかし近年では、修繕積立金の不足が深刻化し、必要な工事が計画どおりに進められないケースが増えています。さらに、住民の高齢化により合意形成が難しくなる傾向もあり、「誰が管理を担うのか」という根本的な課題が浮かび上がっています。
同時に、社会全体で省エネ意識が高まり、国や自治体の政策でも建築物の省エネ化が強く打ち出されています。管理組合にとって、省エネ改修は光熱費削減という経済的メリットに加え、マンションの資産価値を維持・向上させる手段にもなります。
こうした市場動向を踏まえると、修繕と省エネ改修を一体で考えることが、新たなスタンダードになりつつあるといえるでしょう。
制度や仕組みの紹介
表1:マンション管理と省エネ改修に関する主な制度・支援策

出典:国土交通省、環境省、東京都(2025年公表資料)
国土交通省が実施する「マンションストック長寿命化モデル事業」では、省エネ性能を含めた老朽化マンションの再生・長寿命化を目的とした改修計画が補助対象となり、優先的に採択される傾向があります。断熱材の追加や高効率設備の導入は、補助対象工事の代表例です。
また、環境省や経済産業省においても、住宅・建築物の省エネ化を後押しする制度が複数整備されています。窓や外壁の断熱改修、共用部照明のLED化、再生可能エネルギー設備の導入などは、多くの制度で補助対象とされています。
さらに東京都などの自治体では独自の支援策が用意されており、国の制度と併用することで、管理組合の負担を大幅に軽減することが可能です。
これらの制度は内容が複雑で分かりづらい側面もありますが、営業担当者が整理して分かりやすく説明できれば、大きな信頼獲得につながります。実際、展示会場の補助金解説ブースは常に多くの来場者で賑わっていました。
展示会や営業現場での事例

先日の建築・住宅関連展示会では、マンション管理会社や施工会社が、省エネ改修を切り口とした事例を積極的に紹介していました。
ある大手施工会社のブースでは、外壁修繕と同時に断熱材を追加した事例を紹介。その結果、冷暖房負荷が約20%削減され、居住者からは「夏は涼しく、冬は暖かい」といった快適性向上の声が寄せられました。管理組合にとっても、電気代削減という具体的な成果が得られ、満足度の高いプロジェクトとなりました。
また、別の管理会社では、共用部のLED化と高効率空調設備の導入によって、年間数百万円規模の管理コスト削減を実現した事例を展示。営業担当者は「補助金を組み合わせた資金計画を提示したことで、住民総会での合意形成が円滑に進んだ」と語っていました。
営業現場では、こうした省エネ改修の成功事例が強力な武器となります。技術的な説明にとどまらず、生活改善や資産価値維持につながる効果を具体的に示すことが、提案の説得力を高めるポイントです。
よくある失敗と注意点

省エネ改修をめぐっては、成功事例が増える一方で、いくつかの失敗や注意点も見られます。
一つ目は、修繕計画に省エネ要素を盛り込まず、従来型の工事のみを行ってしまうケースです。工事後に「省エネ改修も同時に行うべきだった」という不満が出ることもあります。
二つ目は、補助金制度を十分に理解しないまま申請し、要件を満たせず不採択となるケースです。住民の期待が高まっていた分、資金計画が崩れると信頼低下につながりかねません。
三つ目は、省エネ設備を導入したものの、メンテナンスや運用コストを十分に考慮していないケースです。短期的な光熱費削減だけで判断すると、長期的には負担が増える可能性もあります。
営業担当者には、「補助金があるから導入する」という説明ではなく、ライフサイクル全体を見据えた提案が求められます。特に住民説明会では、「光熱費削減」「快適性向上」「資産価値維持」という三つの効果を整理して伝えることが、合意形成を後押しします。
将来展望
今後、マンション管理における省エネ改修は、さらに普及していくと考えられます。脱炭素政策やZEH推進の流れを背景に、集合住宅にもより高い省エネ性能が求められる時代が到来します。
加えて、AIやIoTの活用により、共用部や各戸の電力使用量をリアルタイムで把握し、自動的に最適化する仕組みの導入も進むでしょう。無駄なエネルギー使用を抑制し、データに基づいた効率的な運用が可能になります。
さらに、太陽光発電や蓄電池と組み合わせることで、マンションが地域のエネルギー拠点として機能する未来像も描かれています。災害時にエネルギーを自給できる体制は、防災面でも住民に安心感をもたらします。
こうした将来像を示すことは、展示会や営業の場において非常に効果的であり、出展企業にとっての差別化ポイントとなります。
まとめ

マンション管理と省エネ改修の新潮流は、単なる修繕の延長ではなく、持続可能な住環境を築くための重要な取り組みです。
背景には、マンションストックの高経年化やエネルギーコストの上昇があります。制度面では国や自治体の支援が整備され、展示会事例からも、省エネ改修の効果が着実に認知され始めていることが分かります。
一方で、計画不足や制度理解の不足による失敗も少なくありません。営業担当者には、専門的な知見と丁寧な説明によって、住民や管理組合の信頼を得る姿勢が求められます。
将来的には、AI・IoT・再生可能エネルギーを組み合わせた次世代型マンション管理が普及し、快適性と資産価値維持を同時に実現する時代が訪れるでしょう。省エネ改修は、出展企業にとって今後の営業提案に欠かせないテーマとなります。
さらに重要なのは、省エネ改修が単なるコスト削減策にとどまらない点です。居住者の暮らしの質向上、脱炭素社会への貢献、そして企業にとっての新たな市場機会を同時に生み出す取り組みだといえます。
2025年12月








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