展示会レポート

【展示会レポート08】高齢者向け住宅と省エネ設備導入
~快適性・安心・経済性を支える住環境づくりの新潮流~

はじめに

日本は、世界でも類を見ない超高齢社会に突入しています。総人口の約3割を65歳以上が占める状況のなか、高齢者向け住宅の需要は年々増加しています。サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)やシニアマンションといった新たな住まいの形が広がる一方で、既存住宅や施設の改修ニーズも高まっています。

こうした流れのなかで、省エネ設備の導入は「快適で安心な暮らし」を支える重要な要素となっています。光熱費の負担軽減や健康維持、さらには災害時の備えとしても、省エネ改修は高齢者住宅において欠かせないテーマです。

本稿では、高齢者向け住宅の市場動向や制度の仕組み、展示会での事例、失敗時の注意点、将来展望を整理し、出展企業にとって営業・販促に役立つ視点を提供します。


背景や市場動向

図1:高齢者人口の推移と割合

図1:高齢者人口の推移と割合

出典:総務省統計局「人口推計」

高齢化の進展に伴い、単身高齢者や高齢夫婦世帯の増加が顕著となっています。従来、高齢者住宅における課題は、バリアフリー対応や安全性の確保が中心でしたが、近年は光熱費負担や室内環境が健康に与える影響への関心が高まり、省エネ性能の重要性が増しています。

例えば、冬場の低温環境はヒートショックの原因となり、高齢者の健康リスクを高めます。断熱改修によって室温を一定に保つことは、快適性の向上や光熱費削減にとどまらず、高血圧の抑制による医療費削減といった社会的効果も期待されます。

また、エネルギー価格の上昇により、年金生活者にとって光熱費は大きな負担となっています。省エネ設備の導入は経済的メリットも大きく、高齢者住宅市場では「快適性」「安心」「経済性」を同時に実現する手段として注目されています。


制度や仕組みの紹介

高齢者住宅×省エネ設備導入を支える主な制度

出典:国土交通省、環境省、経済産業省、各自治体公表資料(2025年)

高齢者向け住宅と省エネ設備導入を支える制度も整備されています。

国土交通省の「サービス付き高齢者向け住宅整備事業」では、新築・改修に対して補助金が用意されており、断熱性能や高効率設備の導入は補助対象となりやすい傾向があります。

また、経済産業省が展開する「給湯省エネ2025事業」では、エコキュートなどの高効率給湯器導入が支援されており、高齢者住宅の改修にも活用可能です。

さらに、多くの自治体が高齢者住宅改修に独自の助成制度を設けています。バリアフリー改修と省エネ改修を同時に支援するケースもあり、営業現場では制度を組み合わせた提案が大きな差別化要因となります。


展示会や営業現場での事例

サービス付き介護住宅

福祉・介護関連展示会では、高齢者住宅向けの省エネ改修事例が数多く紹介されていました。

あるハウスメーカーは、サ高住の新築において断熱材と高効率空調を導入し、入居者の快適性を確保。実際に入居した高齢者からは「冬でも室内が暖かく、過ごしやすい」との声が寄せられました。営業担当者は、医療費削減や健康維持といった付加価値を提案材料にできる点を強調していました。

また、施工会社の事例では、築30年の高齢者住宅にLED照明や人感センサー付き照明を導入。光熱費削減に加え、夜間の視認性向上による転倒防止にもつながったといいます。介護事業者からは「省エネ改修が安全対策にも直結する」と評価されていました。

地域密着型の工務店による個人宅改修事例では、断熱窓と太陽光発電を組み合わせることで光熱費を大幅に削減。「年金生活でも安心して暮らせる」という声が寄せられ、省エネ改修が生活の安定に寄与することを示す好例となっています。


よくある失敗・注意点

高齢者住宅への省エネ設備導入においては、いくつかの注意点があります。

まず、導入コストばかりを強調すると、住民や家族の合意形成が難しくなる場合があります。営業現場では、長期的な光熱費削減効果や健康維持への寄与といった総合的な価値を分かりやすく伝えることが重要です。

次に、設備操作の複雑さが課題となります。高齢者にとって、複雑なリモコン操作やアプリ管理は負担となる場合があり、導入後に十分活用されないケースも見られます。自動制御やシンプルな操作性を重視した提案が求められます。

また、補助金や制度の申請サポートが不十分だと、顧客の不満につながります。制度の条件を整理し、書類作成まで含めて支援する姿勢が信頼獲得の鍵となります。


将来展望

次世代の高齢者住宅イメージ

高齢者向け住宅と省エネ設備導入は、今後さらに拡大する分野です。高齢化の進展により需要は持続的に見込まれ、省エネ性能の高さが住宅選択における重要な基準となるでしょう。

AIやIoT技術の進展により、遠隔でのエネルギー管理や見守りサービスと連動した次世代型高齢者住宅も登場しています。室温や電力消費を自動で最適化し、健康データと連携する仕組みは、高齢者の安心感と家族の信頼につながります。

さらに、太陽光発電や蓄電池など再生可能エネルギーとの組み合わせにより、災害時のレジリエンスを高め、地域防災拠点としての役割を果たす住宅も増えていくでしょう。


まとめ

高齢者向け住宅と省エネ設備導入は、社会課題の解決と市場拡大を同時に実現する重要なテーマです。

高齢化の進展やエネルギー価格の上昇を背景に、国や自治体の支援策が整備され、展示会の事例からも、省エネ改修が快適性・安全性の向上や入居者満足度の向上につながることが確認されています。

一方で、導入コストや操作性、制度理解不足が失敗要因となることもあります。営業現場では、長期的な経済性と健康面での効果を分かりやすく示し、使いやすさを重視した提案が求められます。

高齢者住宅は今後、「社会インフラ」としての役割を担っていく存在です。省エネ設備導入を通じて、快適で安心な暮らしと脱炭素社会の実現を両立させることが、出展企業にとっての重要な使命となるでしょう。

2026年1月