はじめに
近年、住宅市場では再生可能エネルギーの導入が急速に進んでいます。とりわけ、太陽光発電や蓄電池の普及は目覚ましく、国の政策においても「エネルギー自立型住宅」が重点施策として掲げられるようになりました。その背景には、電気料金の高騰や災害時のレジリエンス強化といった社会的な要請があります。
住宅事業者にとって再生可能エネルギーは、もはや単なるオプションではなく、販売促進や顧客満足度の向上に直結する重要なテーマです。工務店・ハウスメーカー・不動産会社などの出展企業が、これらをどのように提案に組み込み、販促に活かしていくかが、今後の競争力を左右します。
本稿では、市場の背景や制度の仕組みを整理するとともに、展示会や営業現場での具体的な事例、よくある失敗や注意点を紹介します。そのうえで、将来展望を見据え、BtoB視点で営業や販促に役立つ知見を提供します。
背景や市場動向
図1:新築戸建て住宅における太陽光発電設置率の推移

出典:経済産業省「エネルギー基本計画」より
再生可能エネルギーと住宅市場の連動は、世界的な潮流として拡大しています。日本においても、再生可能エネルギー比率の拡大は国のエネルギー基本計画に盛り込まれ、2030年には電源構成の3〜4割を再生可能エネルギーで賄うことを目標としています。その中で、住宅分野の役割は大きく、分散型電源としての太陽光発電は政策面からも重視されています。
国土交通省・経済産業省では、新築戸建て住宅における屋根置き太陽光発電の設置率が31.4%(2022年時点)であることを踏まえ、2030年には6割まで引き上げる目標を掲げています。加えて近年では、中古住宅の売買やリフォーム時に「太陽光発電+蓄電池」を組み合わせた提案が増えており、住宅の資産価値を高める要素として認知されつつあります。
エネルギー価格の上昇も、この動きを後押ししています。電気料金の値上げが続く中で、家庭内での自家消費を促す動きが強まり、特に「昼間に発電し、夜に蓄電池で使う」という仕組みが生活者の間に浸透しつつあります。営業現場でも、「光熱費削減」と「災害時の安心」という二つのキーワードが、購買決定に直結している点が特徴です。
制度や仕組みの紹介
表1:再生可能エネルギー関連の主要制度一覧

出典:経済産業省、環境省、国土交通省、東京都(2025年公表資料)
再生可能エネルギーの住宅導入を支える制度は多岐にわたります。中でも注目されるのが、環境省が実施する「地域脱炭素移行・再エネ導入加速化支援事業」です。住宅への太陽光発電や蓄電池導入に対して補助金が用意されており、特に災害対応を組み込んだシステムは優遇される傾向にあります。
また、経済産業省の「ZEH補助金」も引き続き高い注目を集めています。一次エネルギー消費量を削減する住宅に対して数十万円規模の補助が行われ、戸建て住宅だけでなく、集合住宅や賃貸住宅へと対象が徐々に拡大しています。マンションデベロッパーや不動産管理会社にとっても、無視できない制度といえるでしょう。
さらに、自治体独自の助成制度も充実してきました。東京都では2025年4月から「太陽光義務化制度」が導入され、大手ハウスメーカー等が供給する新築住宅などを対象に、一定規模の建築主へ設置が義務づけられています。地方自治体においても、導入補助金や固定価格買取制度の上乗せが行われており、営業現場で活用することで提案の幅が広がります。
ただし、制度は毎年内容が変わるため、常に最新情報を把握することが欠かせません。展示会でも「最新の補助金情報を教えてほしい」という来場者の声が多く聞かれ、制度理解の有無が営業力に直結している実態が浮き彫りになっています。
展示会や営業現場での事例

先日の住宅関連展示会では、「エネルギー自立型住宅」が大きな話題となっていました。あるハウスメーカーは、太陽光発電・蓄電池・EV(電気自動車)を組み合わせた「トリプル活用モデル」を紹介。ブースでは「停電時でも数日間生活できる」ことを示す実演が行われ、来場者の高い関心を集めていました。営業担当者は、「エネルギー面での安心を実感してもらうことが、受注につながる」と語っていました。
別の工務店では、中古住宅のリフォーム事例を展示。築20年の住宅に太陽光発電と蓄電池を導入し、売却価格が周辺相場より数百万円高く成立した事例を紹介しました。購入者からは「省エネ性能が資産価値につながる」と評価され、営業担当者は「リフォーム提案の差別化になる」と強調していました。
さらに、地域密着型の不動産会社では、賃貸マンションの共用部に太陽光発電を設置し、その電力を共益費削減に充てる取り組みを紹介。「入居者満足度が向上し、退去率が下がった」との報告もありました。これらの事例は、単なる省エネにとどまらず、経営課題の解決につながっている点で、出展企業にとって大きなヒントとなるでしょう。
よくある失敗・注意点
再生可能エネルギー導入には成功事例が増える一方で、いくつかの典型的な失敗も見られます。
まず多いのが、制度や補助金に対する理解不足です。「補助金があるから導入できる」と説明したものの、実際には申請要件を満たさず不採択となり、顧客の信頼を損ねてしまうケースがあります。制度の最新情報を整理し、条件を明確に示したうえで、採択可能性の高い提案を行うことが重要です。
次に、施工面での不備が挙げられます。太陽光発電の設置に際し、屋根構造の確認が不十分だったために、雨漏りや耐久性低下を招く事例もあります。営業担当者は施工品質を軽視せず、信頼できる施工体制を示す必要があります。
さらに、ライフサイクルコストを十分に考慮しないまま導入するケースも見受けられます。蓄電池は10〜15年程度で交換が必要となる場合が多く、その費用を説明しないまま販売すると、「想定以上の負担だった」という不満につながりかねません。「初期投資」「維持費」「補助金活用」をセットで説明し、長期的な視点で安心感を提供することが求められます。
将来展望
再生可能エネルギーと住宅市場の連動は、今後さらに加速すると見込まれます。国の脱炭素政策のもと、ZEHやLCCM(ライフサイクルカーボンマイナス)住宅が拡大し、住宅分野が再生可能エネルギー普及の主役となる時代が到来します。
AIやIoT技術の進展により、家庭内エネルギーマネジメント(HEMS)が普及し、発電・蓄電・消費の最適化が自動化されるでしょう。住民は電力使用を細かく意識せずとも、効率的な運用が可能になります。
また、VPP(仮想発電所)の仕組みを通じて、住宅に導入された太陽光発電や蓄電池が地域全体のエネルギー供給に貢献する未来も見えてきました。災害時には地域のエネルギー拠点として機能し、平常時には電力市場へ電力を供給する新たなビジネスモデルが広がる可能性もあります。
営業や販促の場では、こうした将来像を提示することが差別化につながります。「光熱費を削減できる住宅」だけでなく、「地域社会に貢献する住宅」という価値を示すことで、顧客の共感を得やすくなるでしょう。
まとめ

再生可能エネルギーと住宅市場の連動は、単なる技術導入にとどまらず、住宅の在り方そのものを変える新潮流です。
背景には、エネルギー価格の高騰や脱炭素政策があり、制度面でも国や自治体の支援が整備されています。展示会の事例からは、太陽光発電や蓄電池の導入が、生活者の安心や住宅の資産価値向上につながっていることが明らかになりました。営業現場では、省エネ性能を「光熱費削減」だけでなく、「安全性」「資産価値」「地域貢献」といった視点で伝えることが求められます。
一方で、制度理解不足や施工不備、維持費説明の不足といった失敗も見られるため、営業担当者には誠実で丁寧な情報提供が不可欠です。顧客は、補助金や設備のスペック以上に、信頼できる提案と長期的なサポートを重視しています。
将来的には、AI・IoTによるエネルギーマネジメントやVPPの普及により、住宅が地域エネルギーの中核を担う可能性があります。これは企業にとって大きなビジネスチャンスであり、社会にとっても持続可能な未来を築く重要なステップです。
出展企業にとって再生可能エネルギーは、今後の営業提案や販促活動に欠かせないテーマとなります。単なる住宅販売の付加価値ではなく、社会的使命を帯びた提案として位置づけることで、顧客との信頼関係を深め、競争優位の確立につなげることができるでしょう。
2026年1月








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