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講演会「木とグッドライフ-東京における地域産材の活用」
講演:小池百合子氏

普段、何気なく利用している施設や街など様々な暮らしのシーンには、グッドライフを実現するための「木」の活用だけでなく、環境問題さらには地域経済をも考慮した取組がなされていることがわかる興味深い講演でした。「東京都は大都会だから緑が少ないのでは?」という固定観念を覆す話題には私たちスタッフもびっくり!東京都の見え方が変わるかもしれません。


 

講演者
東京都知事 小池 百合子氏

講演内容
1.グッドライフにおける「木」
2.グッドライフを実現する都の取組
3.東京の緑の未来像

 

1.グッドライフにおける「木」

皆様こんにちは。本日はグッドライフフェアにお招きいただきまして誠にありがとうございます。東京都知事 小池百合子でございます。

「グッドライフ」=心地よくて豊かな暮らしをテーマとして会場には衣食住を彩ります様々なものやことが集っております。今日はその中で 「木とグッドライフ 東京における地域産材の活用」をテーマにお話をさせていただきたいと思います。それでははじめに皆様のグッドライフの中での木の存在についての役割のお話を致します。

グッドライフにおける「木」①木材の効用

皆様のお家の中、また職場の中はどれぐらい木が使われていますか。また木が使われているのをご覧になりますとどんな気持ちになるでしょうか。リラックスできる、癒されるなど、感じる方は多いのではないでしょうか。

様々な研究の成果もあります。心理面や身体、そしてまた学習効果や生産性などにおいて様々な効果はあることが研究によって分かっております。例えば、木の香りはなんともいいですよね。自然を感じますよね。そしてストレスを軽減するという効果もあることは皆さんご承知だと思います。そして色や木目を見たり木に触れたりするということで心が落ち着く、そんな効果もあると言われております。また、お子様方の学びや育ち、こういった点でも効果があるという研究報告がございます。例えば保育園や幼稚園で内装に木を使いますと子供たちの集中力が高まったり、活発になったりするそうです。

一方、ビジネスの面でも、木の内装やちょっとした緑、例えば植栽があることで疲れの感じ方が和らぐ、また作業や業務の効率が高まるということも明らかになってきております。

 

グッドライフにおける「木」②森林が生み出す空気、水

こうした木の源である「森林」は木材を提供してくれるだけではございません。見えないところで私たちの生活を支えて豊かにしてくれています。皆さん、学校でもずっと習ってきたことですよね。例えば人が暮らす上で欠かせない空気、そしてまた水をきれいにする作用があります。温室効果ガスの一つ、二酸化炭素をたくさん吸収することで、地球温暖化の対策にもつながっています。また野生の動植物が生息するバイオダイバーシティ、生物多様性の場でもありますし、森林浴や山歩きといった憩いの場にもなっています。

グッドライフにおける「木」③災害から生活を守る

とりわけ強調したいところが「防災面」なんです。近年、気候危機などにより全国各地で風水害が発生しています。土砂災害により崖が崩れてお家が壊されたりしています。被害が激しさを増していることは皆さんご承知の通りであります。本来は、森林の保水力=水を保つ力が災害の被害を減らしてくれるものですけれども、その手入れがされていないと保水力が落ちてしまいます。下草や落ち葉は地表の侵食を抑えて、樹木の張り巡らされた根が土砂の崩壊を防ぐものでございますけれども、その状態が崩れてしまうと崖崩れなどが起きてしまうというわけですね。

日本の国土の7割は森林

さて皆さん、日本の面積のうち森林面積は、国土の何割を占めていると思われますか?
5割だと思う人?6割だと思う人?
はい、実はね、7割なんですよ。7割も森林が占めてるんです。

ではこれは世界的に見たらどうなのか?OECD加盟国37カ国のうちフィンランド、スウェーデンと言ったら森林の国だよねと皆さん思われる。実はフィンランド、スウェーデンについで我が国は第3位なんです。日本は森林の国なんだということを今日一つ改めて確認をしておきたいと思います。要は日本は世界有数の森林大国だということです。

ではその中で東京はどうか。大都会だよね。森林が少ないのではないの?と思われるかもしれませんが違います。多摩地域には緑がたくさんあります。そして島がたくさんあります。ここも緑が豊かです。豊かな自然が広がっています。

森林循環「伐って、使って、植えて、育てる」

さて、ではこの東京の大切な森林を守っていくには一体どうしたらよいのでしょうか。“切って、使って、植えて、育てる”というこのサイクルを繰り返すことにより、古い木を切り出して若い木を植える。それによってまた森林が若返って元気になるというサイクルがあります。木を切り出す前提ですけれども、その使い道がないといけませんね。つまり、需要を増やすということも必要です。木を使うということ 「木づかい」とも言いますけども木を使うことはとても大切なわけですね。では、木をたくさん使うことによって森林がなくなってしまうのではないかと思われるかもしれませんが、これは心配ありません。むしろ木を切って適切に手入れをすることによって森林を荒らさない、荒れてしまうことを防ぐことができます。

2.グッドライフを実現する都の取組

「多摩の森」活性化プロジェクト

さて、今日本では戦後の植林の時代から考えますと大体50年を過ぎているわけです。つまり一言で言うと今、切り時なんです。切り時の森林がたくさんあります。一方で東京は大消費地であります。緑もたくさんありますけども大消費地でもあるというところ、これポイントです。木材の需要を増やして森林の循環を促していくためには東京の役割はとても大きいですね。

具体的な取組を紹介いたしましょう。まずは都内の複数の自治体で連携して活動している「多摩の森 活性化プロジェクト」です。多くの森林を持つ多摩地域の市町村と、そして東京都や23区特別区の多くの自治体が連携をいたしましてもっと木材を使いましょう、つまり木材の需要を生み出して東京の森を育む広域的なプロジェクト、これが推進協議会の中身です。山側と区部の自治体が一体的に森林を整備していく、こうした取組は実は全国で初めてです。現在は13の区市町村と協定を結んでこの動きを進めているところでございます。

全国知事会 国産木材活用プロジェクト

次に全国的な取組をご紹介いたしましょう。47都道府県の知事が集まる全国知事会では、「国産木材活用プロジェクトチーム」というチームがあります。実は私はこういうプロジェクトを作りましょうよと手を挙げて、設立した2018年よりリーダーを務めております。全国の都道府県が集まって取組や課題を話し合い、日本の木材がさらに活用されるように一丸となって国に要望しようと団結しております。全国知事会としてはとてもポジティブな団結ではないかと思います。

東京都による積極的な木材利用

次に身近な施設での取組をご紹介していきましょう。公共施設「東京都美術館」 都美(とび)や、墨田区にあります都立の墨東病院(ぼくとうびょういん)などでは、多摩の山で育った木、多摩産材を使って棚や椅子などの家具を導入いたしております。訪れた方からは「木の良さを実感した」というような声をたくさん頂戴いたしております。また、建物全体を多摩産材で建てた檜原村の農林振興施設(下の写真右)は林業に携わる方や観光客の皆さんが集まって、研修や展示会などが行われているところです。建物全体が木の香りとぬくもりに包まれている、そんな空間となっていまして、木材の地産地消にも貢献をしているところであります。

民間施設を見て行きましょう。こちらの写真ですが、これは神田明神さんなんです。神田明神の文化交流館、なんと一階はショップやカフェがあり、2階、3階がホールになっていまして、ふんだんに木が使われてい建物になっております。商業施設や駅、病院などにも木の導入が進むように都は投資をし、またより大規模な建物にも助成を行うことによって木材の需要拡大を図っております。

民間プロジェクトについて

2026年に日本で初めての本格的な木造商業施設として、芝公園に13階建てのオフィスビルが開業します。渋谷マルイです。多摩産材がたくさん使われています。

そして民間のプロジェクトをもっとご紹介しますと、2028年に丸の内に完成する建物ですが、ちょうど皇居のど真ん前ですね。東京駅との間、目抜きのところです。そこに東京海上日動の新しい本店ビルが今建とうとしているところです。完成が楽しみです。

外壁・外構への木質化支援

そしてさらにはご承知のように令和元年、大阪の北部地震でブロック塀が倒れて小学生が下敷きになって亡くなったという痛ましい事故もありました。ブロック塀はある意味、私は昭和の象徴でもあると思うんですけれども、そのブロック塀を木塀に変えるだけでどれだけたくさんの木が使われることでしょうか。いざ地震になった時にも、その倒れる力が軽減されることも期待されます。木塀へ取り換える取組を進めることで安全の確保、そして町の風景も変わってくるということです。(下の左写真:木塀のイメージ)
下の右側の写真、都立の木場公園にあるKIBACO(キバコ)というカフェです。外の壁には木が使われていて、公園の自然ととてもよくマッチしていますよね。

民間住宅における木材利用の促進~木材利用ポイント事業~

そして皆さんのお住まいになる住宅ですけれども こちらの支援も行っております。住宅の新築やリフォームをされる際に国産の木材をお使いになることで伝統工芸品や家具などと交換できるポイントをプレゼントするというものがございます。是非お使いいただきたいと思います。窓の冊子にも木材が最近使われるようになりました。見た目にも美しいですし、断熱性の向上につながり、結露もしにくくなるなどいろんな利点がございます。

全国の木材製品などの展示商談会 WOODコレクション(モクコレ)

そしてこの会場にも木製の製品がたくさん並んでおりますよね。こうした製品に触れられる場も設けております。全国各地の木材関連企業の皆様の協力を得まして大規模なイベント「WOODコレクション 2024『JAPAN ReWOOD』」を今年8月に開催し、国産木材を使った製品など展示や商談を行う展示商談会を行いました。そして「WOODコレクション(モクコレ)2024 Plus」を2024年12月19日、20日の2日間、この東京ビッグサイトで開催いたします。多くの都道府県が参加をいたします全国規模の展覧会です。もちろん学生、一般の方々の向けの展示販売も行いますので是非足を運んでください。

MOCTION(国産木材魅力発信拠点)とTOKYO MOKUNAVI(多摩産材情報発信拠点)

それから新宿の東京都庁のそばのビルには木材の情報発信拠点MOCTION(モクション)を常設し全国各地の木製品を実際に見て触れて木の良さを肌で感じていただくことができる展示を行っています。スタッフも常駐しております。様々な相談も受けられます。そして同じビルに東京の森林や多摩産材の魅力を発信する「TOKYO MOKUNAVI(モクナビ)」という体験型ショールームがございます。多摩の森で見られる美しい風景とか東京の林業の現場体験できる、映像など大画面で楽しめる、またVR映像も活用しております。どちらも無料です。ぜひ新宿にお立ち寄りの際はお越しください。

3.東京の緑の未来像

東京グリーンビズについて

木をいかに使うかということですが最後にもう一つ緑を増やす100年先を見据えた東京グリーンビズを紹介しておきましょう。これは緑がもつ様々な力を最大限発揮させて人が憩い楽しく歩けるまちづくりを進めるというものであります。屋敷林それから農地、東京にあるこれらの緑を守っていく、公園やまちづくりに合わせて緑を育てる、自然の持つ力を豪雨対策などに役立ててグリーンインフラなど東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取組です。東京の緑の価値を一層高めて未来に承継していく取組です。

グリーンビズの事例

具体的な事例をちょっとご紹介いたしましょう。近年ですと虎ノ門麻布台、壁面・屋上も組み合わせて緑化されています。次に東京のど真ん中、竹芝、大手町など、都心三区では実は緑が増加している。
この数字ご覧ください。最近の民間開発により新たに生まれた緑はなんと6万平米にも達しております。

そして東京建物の大手町タワー、これはビルとビルの間に森ができているのをご存知ですか。大手町の森は敷地全体の3分の1に相当する約3600㎡にも及ぶ緑です。自然環境と都市機能の調和は街づくりの大きなテーマでございますので、緑と調和した街づくりを東京は進めてまいります。

そして街の緑を見える化するということで7月に東京グリーンビズマップをリリースいたしております。是非調べてください。東京グリーンビズマップと検索して、都心の緑あふれるスポットや多摩の森林の場所がすぐわかるようになっております。そしてご覧いただきましたように、おそらく皆さんが思っておられる以上に緑のスポットがたくさんありますのでぜひ有効に活かして緑を味わってください。

私は2005年にクールビズを始めたわけでございますけども今はグリーンビズに直球で臨んでいるところでございます。是非東京グリーンビズをみんなで進めてまいりましょう。そしてまた取組の輪を広げ身の回りをいかにして緑を増やしていくのか、身の回りに木を取り入れられるのか、この両面の取組についてご紹介いたしました。

木を使うことがまさに今日のテーマであります。私たちのグッドライフ、健全な森づくり、そして東京と日本の未来につながるとこと実感していただけたのではないかと思います。どうぞこうした木使い、自分の身の回りでそしてまたちょっと足を伸ばしてみて緑を実感して森や木をいかに自分の身の回りで使ってみるかなど、自分ごととして進めていただきたいと思います。