今どきの住宅ローン 固定金利と変動金利のメリット・デメリットを徹底解説!

住宅ローンの金利は、「変動金利」「固定金利」と2つに大別されます。
金融機関が商品化している住宅ローンは、「変動金利型」「全期間固定金利型」、両方をミックスした「固定期間選択型」と3種類です。
種類がありすぎて何を選べばいいかわからない・・・。
住宅ローンは何を基準にして選べばいいの・・・。
など、悩まれる方は多いのではないでしょうか。
変動金利と固定金利、金利の決め方や変動の要因を知っておくと、住宅ローン選びの参考になります。
固定金利と変動金利の成り立ち
固定金利と変動金利の金利差拡大の理由

今年に入り固定金利が上昇する一方で変動金利は横ばいのため、固定と変動の金利差が拡大しました。
固定金利と変動金利の金利差は、モノサシの違いに起因します。
固定金利は、米国の長期金利に連動している日本の10年物国債の利回りを指標としています。そのため、物価高を抑制するために利上げを続ける米国の影響を受けやすくなります。
一方、変動金利は、国内の短期金利に連動しているため、金融緩和により低金利政策を続ける日本の状況が反映されています。
利上げの米国、低金利政策を続ける日本、という両極端ともいえる経済政策が住宅ローンの「変動」と「固定」の金利差として表れています。
金利変動の主な要因を知っておく
金利が変動する要因は一つではなく、様々な要素が絡み合い複雑であるからこそ予測が困難なわけですが、一般的に次のことが金利変動に影響すると言われています。
<景気・物価>

景気が良くなると、企業の業績が上がり給料も増えます。給料が増えると消費意欲が増し、物価も上がります。お金を借りてでもモノやサービスを購入しようとする人が増えるため、金利が上昇します。
逆に、景気が悪くなれば、企業の業績の悪化に比例して給料も減るため、消費意欲が減退しお金を使わなくなり、金利が下がります。
<為替>

一般的に、円安になるとモノの値段が上がり物価が高くなるため、金利も上昇傾向となります。反対に、円高になるとモノの値段が下がり物価が下がることになるため、金利も下降傾向となります。
住宅ローンの金利もこれにならい、円安時には上昇し、円高時には下降すると考えられます。
<金融政策>

景気、物価、為替など、複合的な要因が住宅ローンの金利に影響しますが、最終的には、日銀の金融政策が、他の要因を一蹴するほどの影響力を持ちます。
2022年は円安の影響で物価高となっています。
しかし、モノやサービスの値段が上がっても、給料は増えていないため真の意味で好景気という状況にはありません。
そのため、金利を上げることができず低金利政策継続中であるため、変動金利は横ばいです。
固定金利は、米国の長期金利に連動しているとはいえ、日本の10年物国債の利回りは一定水準を超えないよう日銀が「指値オペ」で調整を行っているため、固定金利も低水準です。
つまり、日銀が現状維持の金融政策を取る限りは、住宅ローン金利に大きな変動が起こる可能性は低いかもしれません。逆に言うと、金融政策を転換し利上げに舵を切ることになれば、住宅ローンの金利も上がることが予想されます。
これから住宅ローンを借りる方は、政府や日銀の動向も判断材料の一つとして注視しておきたいところです。
変動金利と固定金利選びは投資に似ている
投資でお金を運用するときに「ローリスク・ローリターン」、「ハイリスク・ハイリターン」という言葉を耳にします。
住宅ローンの商品選びに迷うときは、投資と同様の考え方をすることができます。
住宅ローンにおけるリターンとは、いかに返済総額を少なくするかということです。

変動金利をハイリスク商品と考えると、完済まで金利上昇がなければ、返済総額は固定金利を選んだ場合より少なく、逆に、金利が上昇したら、返済総額は多くなります。
リターンが良いほうに振れるか悪いほうに振れるか、リターンの幅があるのが変動金利です。
固定金利のリターンの考え方は、変動金利の金利次第です。変動金利が上昇しなかった場合には、返済総額は変動金利を選択した場合より多くなりますが、最初から返済額が確定していることはリスクが低いと捉えることができます。
リスクを取りたくなければ「固定金利」、リターンを追及するなら「変動金利」という考え方ができそうです。
言い換えると、「より安全で、より得をする」商品はないと考えるのが妥当でしょう。
固定金利と変動金利の特徴と2つの返済方式
「固定金利」と「変動金利」。一方のメリットは、もう一方のデメリットになり得ます。
家計がリスクをどれだけ許容できるかが金利選びの基準になりますが、返済額をなるべく抑えるためには、「変動」か「固定」の金利タイプの比較だけでなく、返済方式についても検討してみましょう。

固定金利のメリット・デメリット
<メリット>
- 借入時に金利が確定し、総返済額が確定するため返済計画が立てやすく、将来のライフプランを見通せる。
- 変動金利より、金利設定が高いため繰上げ返済の効果は現れやすい。
<デメリット>
- 借入後に市中金利が低下しても、返済額に反映されない。
変動金利のメリット・デメリット
<メリット>
- 借入後の市中金利が反映されるため、金利が下がれば返済額が減少する可能性がある。
<デメリット>
- 借入時に金利が確定しないため、返済計画が立てにくく、将来のライフプランを見通すことが難しい。
- 借入後に金利が上がると、返済額が増える。
変動金利の5年、125%ルールとは?
変動金利は一般的に6ヶ月ごとに金利が見直されます。
しかし、仮に金利が急激に上がった場合、ダイレクトに返済額に反映してしまうと家計が破綻してしまうことも考えられるため、多くの金融機関では、「5年、125%ルール」を適用しています。
金利が上がっても、5年間は返済額が変わらない
たとえば、ローン返済開始当初は月10万円の返済額であった場合で、3年目の見直しにより金利が上昇したとします。しかし、この金利上昇は、すぐには返済額に反映させず5年間は返済額10万円のままとするルールです。
ただし、返済額10万円の内訳が変わります。たとえば、返済当初は(元金6万円+利息4万円)だったものが、金利が上昇することで利息部分が増えるため、(元金5万円+利息5万円)となるイメージです。
返済額の変更は6年目に行われます。
返済額は見直し前の125%以内
たとえば、返済額10万円の場合に、金利上昇分をダイレクトに返済額に反映させると15万円となってしまう場合でも、返済額は見直し前の125%を超えないというルールです。
つまり、返済額が10万円なら、見直し後の返済額は12.5万円が上限です。
ただし、注意しておきたいのは、5年、125%ルールは、家計への影響を小さくするための措置であって、金利上昇分の支払いを免除されるものではないということです。
金利が上がると、毎月の返済額が変わらなくても内訳は利息比率が上がり元金比率が減ります。元金の支払いを先送りしている状態です。
この状態が続くと、ローン最終日に先送りした金額を一括返済する必要がでてきます。
住宅ローンの返済方式は2つ
住宅ローンの返済総額は、変動金利、固定金利の金利タイプが影響することは間違いありませんが、その他に返済方式によっても差がでます。
住宅ローンの返済方式には、「元利均等返済」と「元金均等返済」の2種類があります。
元利均等返済 | 返済期間中、元金と利息の合計額を一定とする返済方式。 毎月、同額を返済します。支払い当初は、利息の割合が高く元金が減るスピードが遅いため、返済総額は元金均等返済より多くなります。 |
元金均等返済 | 返済期間中、元金を一定額とする方式。 元金の返済が一定額のため、元金の減るスピードが元利均等方式より早いです。 元金が減るスピードに比例して利息も減るため、返済額は借り入れ当初が一番重く、その後徐々に少なくなります。 |
https://www.mof.go.jp/policy/filp/publication/filp_report/zaito2021/glossary.html


なお、変動金利の「5年、125%ルール」は「元利均等返済」にのみ有効です。「元金均等返済」では、金利の変動はすぐに返済額に反映されます。
元利均等返済と元金均等返済でシミュレーション
借入額:3,000万円
返済期間:35年
利率:2.03% 全期間固定型
ボーナス返済なし

https://www.smbc.co.jp/kojin/jutaku_loan/simulation/shinki01/)
このように同じ金利でも、返済総額は元金均等返済のほうが軽くなります。
元金均等返済は返済額が一定ではないことから敬遠されがちですが、固定金利の元金均等返済であれば、シミュレーションを行うことで返済計画をライフプランに落とし込むことは可能です。
将来、教育費や老後資金が必要になるタイミングで、毎月の住宅ローン返済が軽くなっていくことを考えると一考の価値はありそうです。
ライフプラン別に金利タイプを選択
住宅購入の時期や家族構成を考慮して、金利タイプを選ぶ方法を考えてみます。
借入額と返済期間
たとえば、若い世代の場合、住宅ローンの借入期間を長期に設定することが多くなります。先々の家族構成やライフイベントが未定である場合には、固定金利を選ぶほうが安心という考え方もできます。
返済期間が長ければ、将来の金利の変動を予測することは一層困難になりますし、借入額が多ければ金利が上昇したときに受けるダメージも大きくなるため、変動金利を選ぶことのリスクは増します。

つまり、返済期間が長く借入額が多い場合は固定金利、逆に、返済期間が短く借入額が少ない場合は変動金利という選び方もできます。
家計に余裕がある
家計にある程度の余裕資金がある場合には、金利変動による返済額の上昇にも対応可能でしょう。手持ち資金で一部繰上げ返済をしてローン元金を減らすことで家計への影響を小さいものにできます。
将来的に貯蓄が増やせるなど家計に余裕ができる見通しがあれば、金利変動のリスクを吸収できます。

ライフイベントが未定
住宅購入の先の人生にどれくらいのお金が必要となるのかが不明である場合は、金利の変動リスクを避けるという選択肢もあります。
たとえば、家族が増える予定、子どもの進路が未定の場合など、これからの必要経費を見積もることが難しいケースでは、住宅ローンの返済額は確定しておくほうが安心です。

逆に、子どもの独立で生活資金に余裕を持てそう、退職金の額もある程度確定しているなど、先々のライフイベントがある程度見えているのであれば、変動金利の選択もありでしょう。
住宅ローン控除制度も上手に活用
最近は、住宅ローン控除を最大限活用するために、手持ち資金をあえて頭金とせず手元に残すという方もいます。
現行の住宅ローン控除制度(2022年)は、諸々の要件を満たすと、毎年末のローン残高の0.7%が13年間、所得税から還付されるというものです。(2025年12月末までの入居が条件)

変動金利の利率は、この住宅ローン控除の利率0.7%より低い設定であることも多いため、手元に資金を残しあえて住宅ローンを借りて、住宅ローン控除を受けたほうが得になることがあります。
手元に残した資金は住宅ローン減税が終了した後に繰上げ返済用資金とすることもできます。
まとめ
2022年に入り住宅ローンの固定金利が上昇したことから、現在、マイホームの購入を検討している方、いずれは購入したいと考えている方は、今後の金利の動向が気になっているのではないでしょうか。
固定金利が上昇すると、後追いで変動金利も上がるという警戒感から固定金利を選ぶ判断をする方もいます。
一方で、変動金利は金利優遇により金利が0.5%以下となることも珍しくないため、特に初期の返済額を抑えたい場合には変動金利を選択する方もいます。
住宅ローンの金利は、金融機関により利率が違います。また返済方式によっても返済額は異なります。何を選ぶべきかは、個々の事情や考え方により違うでしょう。
住宅のような大きな買い物をするときにはライフプランを立ててみましょう。目先のことだけでなく将来のことも見えてきます。
いろいろなパターンでシミュレーションしてみることが大切です。