はじめに
日本全国で増え続ける空き家は、社会問題として大きな注目を集めています。総務省の統計によれば、全国の空き家数はおよそ900万戸に達し、総住宅数に占める空き家率は13.8%となっています。空き家数はこれまで一貫して増加しており、1993年から2023年までの30年間で約2倍に拡大しました。高齢化や人口減少を背景に、放置された空き家は治安や景観の悪化、地域コミュニティの衰退など、さまざまな問題を引き起こす要因となっています。
図1:全国の空き家数の推移

一戸建てに限ると、全国の空き家総数は約352万戸にのぼり、そのうち「賃貸・売却用および二次的住宅を除く空き家」が80.9%と最も高い割合を占めています。一方で、空き家をリノベーションして再生する動きも近年広がってきました。特に、省エネ改修を組み合わせた「再生+省エネ」の取り組みは、賃貸住宅や売却用住宅として新たな価値を生み出しています。
住宅市場において持続可能性が求められる中、空き家活用と省エネリノベーションの連動は、新たなビジネスチャンスとして注目されています。本稿では、背景や市場動向、制度の仕組み、展示会での事例、失敗時の注意点、将来展望を整理し、出展企業の営業・販促に役立つ視点を提供します。
背景や市場動向

空き家が増加する要因には、相続後に利用されないまま放置されるケースや、立地条件が悪く需要が見込めないケースなどがあります。「遠方に住んでいるため管理できない」「借り手や買い手が見つからない」といった事情も、空き家増加に拍車をかけています。
一方、市場に目を向けると、リノベーション住宅への関心は年々高まっています。コストを抑えつつ、自分らしい住まいを実現したいというニーズが広がっているためです。加えて、省エネ基準の強化や光熱費高騰の影響から、「断熱」「省エネ設備」「再生可能エネルギー導入」を組み合わせた空き家再生が注目されています。
住宅事業者にとって空き家は「課題」であると同時に、「未開拓の資源」でもあります。適切なリノベーションによって市場価値を再生できれば、新築需要の減少を補う新たな事業領域となる可能性があります。
制度や仕組みの紹介

出典:国土交通省、住宅金融支援機構、環境省、各自治体資料(2025年公表)
空き家活用と省エネリノベーションを後押しする制度は複数存在します。
国土交通省の「空き家再生等推進事業」では、空き家をリフォームして賃貸住宅や地域拠点として活用する場合に補助金が交付されます。また、住宅金融支援機構の「グリーンリフォームローン」では、省エネ改修を伴う場合に金利優遇が受けられます。
環境省の「断熱リノベ支援事業」や経済産業省の省エネ関連補助金も活用可能です。これらは窓・壁・屋根の断熱改修や高効率設備の導入を対象としており、空き家再生と組み合わせることで投資回収性の向上が期待できます。
さらに、自治体レベルでも空き家バンクを通じたマッチングや改修費補助を行う地域が増えています。特に地方都市では、移住促進や地域活性化と連動した支援が進んでおり、営業現場では「制度を組み合わせた提案」が差別化のポイントとなります。
展示会や営業現場での事例

住宅関連展示会では、空き家活用と省エネリノベーションをテーマとした事例が数多く紹介されていました。
ある不動産会社は、築40年の戸建て空き家に断熱改修と太陽光発電を導入。入居希望者は「光熱費を気にせず暮らせる点」に魅力を感じ、賃貸として即入居が決まったといいます。営業担当者は「省エネ性能を打ち出すことで、空き家でも入居者が見つかりやすくなった」と語っていました。
また、地域工務店は古民家の空き家を断熱材と高効率給湯器で改修し、カフェ兼シェアオフィスに転用。省エネ性能を確保することでランニングコストを抑え、事業者の負担軽減につながった事例を紹介していました。
さらに、施工会社が相続した空き家に対し、補助金を活用したリノベーション資金計画を提示した結果、売却ではなく賃貸化が選ばれ、収益化に成功した例も報告されています。
よくある失敗・注意点
空き家活用が注目される一方で、失敗事例や注意点も少なくありません。
まず、建物の状態を過小評価してしまうケースがあります。外観は良好でも、構造部材や配管・配線の劣化、耐震性能の不足などが後から判明し、追加工事によるコスト増につながることがあります。事前に専門家を交えた調査が不可欠です。
次に、省エネ改修の効果を過大に伝えてしまう点です。補助金により負担は軽減されますが、すべての改修が短期間で投資回収できるわけではありません。ライフサイクルコストを踏まえた現実的な説明が求められます。
また、制度理解不足によるトラブルも見られます。補助金には申請時期や条件があり、情報不足により交付を受けられないケースもあります。営業担当者には、最新情報を把握し、正確に伝える役割が求められます。
将来展望

空き家活用と省エネリノベーションは、今後さらに注目度を高めると考えられます。国の「ストック重視」政策のもと、新築市場の縮小を補う形で中古・リノベーション市場の成長が見込まれています。
特に、地域活性化との連動が重要なテーマです。地方自治体は移住促進やコミュニティ再生と組み合わせた空き家活用を進めており、省エネ改修を取り入れることで「快適に暮らせる住まい」としての魅力が高まります。
さらに、脱炭素社会の実現に向け、断熱改修や再生可能エネルギー導入は不可欠となります。AIやIoTを活用したエネルギーマネジメントを空き家リノベーションに取り入れることで、事業性を高める可能性も広がっています。
まとめ
空き家活用と省エネリノベーションは、社会課題の解決と住宅市場の持続的成長を両立させる重要な取り組みです。
空き家の増加やエネルギー価格の高騰を背景に、国や自治体はさまざまな支援策を整備しています。展示会の事例からも、省エネ性能を打ち出すことで入居者や購入者の関心が高まり、販促に直結していることが分かります。
一方で、建物診断の甘さや制度理解不足、効果を過大に伝える提案は失敗につながります。誠実で現実的な提案こそが、信頼獲得の鍵となります。
空き家再生は、地域活性化や脱炭素社会の実現に直結する可能性を秘めています。省エネリノベーションは単なる工事ではなく、「未来の価値を創出する投資」であり、出展企業にとって大きな差別化要因となるでしょう。
2026年1月








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