日本では1990年代後半から「シックハウス症候群」が大きな社会問題となりました。シックハウス症候群は、新築工事の際に使用される建材や接着剤から放散されるホルムアルデヒドなどによって居住者らに健康被害を及ぼすもの。2003年に建築基準法が改正されシックハウス対策が施行。以後、「健康住宅」は新築を購入するためのキーワードにもなっています。
日本家屋の歴史
まず、これまでの日本家屋を振り返ってみましょう。昭和40年代、家は竹や粘土、藁などを使用した壁を採用していました。透過性が高いため、シックハウス症候群の原因となる化学物質の空気感染が起こりにくい室内になっています。夏場は涼しいものの、冬場の寒さ対策に課題がありました。
昭和50年代は工業化が進み、「プレハブ住宅」が量産されます。軽量鉄骨をセメント板などのパネルで囲う工法で、気密性や断熱性は向上。しかし、冬場に結露が増えてしまい、夏は室内が温まり過ぎるという新たな課題も。夏の暑さを凌ぐため、エアコンが普及したのもこの時代です。
その後、昭和60年代となって台頭したのが「ツーバイフォー住宅」です。ツーバイフォー住宅は1974年の建設許可以降、着工数が右肩上がりで伸びており日本では馴染み深いものとなりました。高い気密性、断熱性に加え耐震性も向上。ところが、合板に含まれる農薬や接着剤が揮発するリスクもあります。
平成に入ると高気密高断熱住宅がブームになります。壁材はビニールクロスが主流。いわゆる「在来ビニールクロス張り住宅」と呼ばれるものです。ツーバイフォー住宅や在来ビニールクロス張り住宅にみられる高気密高断熱住宅が確立された約10年後、シックハウス症候群が顕在化することになります。
大工が偶然発見した“気流”
合板やビニールなどの化学素材で覆われた高気密高断熱住宅に疑問を抱いていたのが当時、大工の棟梁をしていた寺島今朝成氏です。寺島氏は「なぜ在来工法は寒いのか」に着目。八畳一間の小さな家を建て、17ケ所に温度計と湿度計を取り付けてデータを計測しました。
効果的なデータが得られない日が続く中、ふとタバコに火をつけました。壁の測定窓を開けるとタバコの煙が吸い込まれ、壁の中を上昇していくのを目撃。反対側の壁に取り付けた測定窓に煙を近づけると、今度は下に流れていきます。
家というのは外壁に包まれた気密空間ですが、壁や天井などがあるためもう一つ内側に壁がある二重構造になっています。この時、寺島氏は「暖かい部屋の壁際で上昇気流が発生し、壁の向こう側では冷たい空気が下がるコールドドラフト現象が起きている」という事実を発見しました。
高気密高断熱住宅は、外壁と内壁の間に断熱材を入れ、空気を閉じこめる仕組み。一方、在来工法は木材が蒸れて腐るのを防ぐために空気を循環させます。つまり、床下の冷たい空気が壁の中を循環して家全体を冷却するように動いていました。これが在来工法における冬の寒さの原因だったのです。
もともと在来工法は夏の暑さや湿気対策に適しています。弱点である冬の寒さの原因を突き止めた寺島氏は、在来工法をベースとし“春から秋までは壁の中の通気を自由にして冬だけ通気を止める方法”を模索します。寺島氏は外気温によって形を変える素材、「形状記憶合金」に着目。「形状記憶合金」を通気口の開閉に利用し、気温が高い季節では通気口が開き、気温が下がると通気口が閉まるという仕組みを実現させました。
通気断熱WB工法
この仕組みを利用した新工法は「通気断熱WB工法」と名付けられ、特許を取得。WBはダブルブレスと読み“2つの通気層で呼吸する”という意味があります。WB工法で建てられた「WB HOUSE」は、自然の力を利用して家自体が呼吸する機能を備えています。「湿気」、「臭い」、「ホルムアルデヒドなどの有害物質」が室内から抜けていく、画期的な健康住宅のカタチと言えるでしょう。
■WB HOUSE取扱店
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